続きの話

『湖畔の漂着物』

子どもたちがする、外の世界から流れてきたものを見つけて言いあう遊び。 あれは、なんだか淀んでる これ、きらきら! こっちのぎらぎら あそこには、ぐるぐるうずまいてるのが にがにがしい 無色透明無味無臭 きったない! どすぐろい 甘ったるーい あった…

「ひょんの木」

子どもの頃からの付き合いだけれども、この木は喋る。ひょんひょん喋る。風のあまりない、太陽の出た、穏やかな青空の、暑過ぎない暖かい日。自然それは、春の端っこに少しと、秋にそこそこ、それからもしかしたら冬の限られた時間、くらいしかなく、今年は…

「ひょんの木」

ひょんの木にはひょんの実がなって、ひょんの実の中身は手紙であって、だけど宛先は分からなくて、ていうかひょんの木って知らないんだけど何って、ひょんの実の中身の手紙であって、だけど宛先間違えたんじゃないって、今回は参加できませんって、手紙が、…

終着駅

ときどき、 気づくとそこへ向かっている あなたが待つその場所へ実際のところは、 待っているのは私で あなたを見送ったまま 待っている引いてくれる手を 子どもになって 待ちぼうけて 大人になって 見送って そう、 ただ見ているだけだ 何もできない 大人の…

「シュークリーム」

高校に入学して四日目の朝。 シュークリームに捕らわれてしまった。というか、人から見るとどうもわたしは、シュークリームになってしまった、ようだ。 考えてみるに、高校生になったらもしかして彼氏とかできるかな、なんて三日間思いを馳せ続けていたわた…

五月と六月

枯れかけたシロツメクサの五月 完全に茶色くなった花をつけた六月 その花だと分かるのは、 白い花も咲いているから

今頃のお休みの日になると

今頃の時期、つまり五月の終わり頃から お休みの日になると、 あちらやそちらの家々の脇に 赤やピンクの花の咲いた、 プラスチックらしい白い鉢を見つける

「告白」(第112回500文字の心臓競作)

はい、ごめんなさい。まだ書けていません。……ああ、そうですね、謝っても仕方がないですよね。締め切りは、はい、覚えています、二〇一二年、三月二十日、春分の日です。……はい、そうです。私はまだ書けていないのです。※このお話はフィクションでしょ?----…

ひかり町4

【グルメ】「カフェ ディライト」 断然オススメはパンケーキ。牧場直送の新鮮な牛乳、卵、バターを使い、ふんわりと焼かれたケーキの上には、ラズベリーとブルーベリー二種類のジャムが添えられた素朴にしてリッチなパンケーキです。思わずおかわりしちゃう…

ひかり町3

【こもれび情報】「駅前広場の噴水」 駅前の広場には小さな噴水があり、毎日午後三時になるとオルゴールの音とともに盛り上がりを見せます。そして晴れた日には、一色だけの虹(?)がかかります! 月曜は紫、火曜は赤、水曜が橙色、黄色の木曜、金曜は緑、…

ひかり町2

【あそぶ】「ひかりが丘」 遊具も噴水もベンチも木陰も何もない広々とした草っぱら。だけど晴れの日の多いひかり町では、子どもたちが思う存分走り回れる絶好の遊び場となっています。お弁当を持ってご家族そろってピクニックはいかが?【ものがたり】「切り…

K

勝手なことをと、君は雲の巣を蹴飛ばした。怖がったふりの彼女たちは黄色くきらきらと煌めき暮れ、煙と消える。くすくすけれん味のある声が口内で木霊する。君と雲との結婚は叶わず、鞄を担ぎ、傘で舵を切り下降する。乾いた風がかたかたと欠けていくと、彼…

ひかり町

【おみやげ】「ふたごドーナッツ」 電車の時間が来ちゃう、まだおみやげを買い足りない! ありますよね。そんな時には、ふたつのドーナッツが仲良く横にくっついた不思議な形のふたごドーナッツはいかが。ホーム内で買えますよ。3コ(3組)入り315円。 …

サンタさんに質問!

トナa「サンタさん、またお手紙来ましたよ、どばっと」トナb「1063通です」トナc「リクエストが1024通に、サンタさんへの労いが18通、僕たちへの労いが1通、去年のプレゼントへのクレームが20件です」白ひげ「置いとけ! まったく、読んでる暇なんてあるわけ…

{砂場さんの「白縫さんの『1000人の胸を1回ずつ揉むのと1人の胸を1000回揉むのとではどちらが貴いのか』に疑問が呈した」に対するささやかな反論}への返答

の、前にQ. なんですかそれは?A. こういうことです。→http://siraisa.seesaa.net/article/225363193.html(むしろこっちか→http://siraisa.seesaa.net/article/224633019.html)というわけで、返答。分かったー。

疑問が呈した

「白縫さんの『1000人の胸を1回ずつ揉むのと1人の胸を1000回揉むのとではどちらが貴いのか』に疑問が呈した」 小人たちの行動には、頭いい!と思ったのだ。思ったのだがしかし疑問が浮かんだ。> しかし動きがないところを見れば、帽子の色の比率はおおよそ拮…

結晶

さいきん世界が暑いのは双子の兄弟が夏休みに入って、兄が太陽の光で、弟が月の光で結晶作りをしているから。きらきらと反射する夏休みの宿題のせい。 少しまえ寒かったのは冬休みの宿題で二人そろって海の水の……。

結晶

「あら?」と、武藤さんが言った。「まあ、まあ!」 感嘆詞を続けざまに、武藤さんのスプンには、コーヒーと共につぶれたラグビーボール型の、キャンディみたいな塊──もしかしたらキャンディ──が載っていた。「ぶどう飴かしら」「い、入れてませんよ」 ため…

星と願いごと

「何してるの」「お願いごと。お星様に」「ばかだね。お願い事はもっと近くにするものだろ」「近くって?」「そうだねえ。じゃあこのカンカンをあげよう」「あ、空っぽ」「こないだ食べただろ。この中に目がけて毎日お願いするといい」「そうしたら叶う?」…

巡る季節(梅雨)

「雨降らしの仕事」 わしの仕事はもちろん、雨を降らすことだよ。具体的にはまあ、説得だな。 雨。雨の宝庫と言えばここ。な、海だろ。海の水つぶ、ひとつひとつにさ。忘れてるかもしれんけど、あんたさんは前、雨だったろ、ざあざあ、ぽつぽつ、しとしと、…

巡る季節

「夏が来る」 夏が近づいて来た! というか、もう今日は、隣の隣の町まで来ていたぞ……。捕まらなくて本当によかった。どうもわたしは居眠りが多くていけない。今夜中に引っ越さなくては。追いつかれたら居眠りどころか永眠だな。あっはっはっ! 梅雨がいなく…

「甘くったって」

「塩なんですよ」「いや、あんた砂糖だろうよ、そのざらざら具合。俺にそっくり」「でも"solt"って名前が」「綴り間違ってんな」「そうなんですよ」「いやいや、閑話休題、入れ物間違えたんだよ。うっかり野郎がさ」「砂糖の入れ物に入ってる砂糖のあなたに…

「君と法螺との間には」

さらさらとした砂は、グラニュー糖のようであり、グラニュー糖のようでなかった。 それならブラウンシュガーに似ているのかといえば、全然似ていない。波がこんなに洗っているのに、溶けもしない。海に溶けているのは塩であるし、砂糖が溶けているのが海であ…

「うさぎの寝言」

三年前にうちにやってきたうさぎが、なんだか最近うなされている。──ううう……。 うさぎもゆめをみるのだろうか。うすちゃの毛をふるわせて、なんだかかわいそうだ。今、かいぬしである娘は修学旅行にいっている。わたしはコーヒーを飲みながら、ねむるうさぎ…

「和音分解」

カシオペアが見えた日の驚きと言ったら。ひしゃくも見つけた。次々と見えた。 今度は星座を一つずつばらしていく。誰かが付けた名前を剥がしていく。私は名前をつけず、あの中のどれかがあなた。夜の間、私はあなたの子どもにかえる。歌を抱き、泣きながら眠…

「あとひとつ」

雨上がり一人つぶやく。あなたの左手掴んだままに。 明るい光の粒々が、紫陽花にひっついている。 青色の日傘は杖にするには短かった。「会うのよそうか」「ひどい男」「つまらないよそれ」「あーあ」「暇だよな、俺たち」「つまらない男ー」 秋の日はつるべ…

「天空サーカス」

木の枝から垂れたくもの糸の先、葉っぱが落ちずにくるくるくると回り続ける。器用だね、と言うと、宙づりだ、との答え。糸がへへんと笑うが、無理をしているのは見え見えで、明らかに酔っている。その点、葉っぱの方は常日頃から風に揺さぶられ、挙句落ちる…

「ドミノの時代」

わたし、倒すくらいしか知らないんだけど、なんだかすごく流行っているみたい。お正月に親戚みんなでドミノしたって、珍しいよね、今時親戚が集まるって、合コンでもドミノするんだって、ネットでドミノ対戦もできるみたい。友達、新婚旅行ドミノだって。今…

「あおぞらにんぎょ」

雪たちが着々と降り積り、三日分の子どもたちの期待、大人たちのため息、子どもたちのため息、大人たちの期待が積り、四日目、前夜の天気予報のとおり晴れ渡った朝、彼女は産まれ、雪と同じ音を立ててひとり落ち降った。祝福はなく、かと言って邪険にされた…

白と灰色のうさぎの町

「白と灰色のうさぎの町」 そこはとても寒い町なので、道の端や家の前の横っちょに、いつも雪が残っている。道の脇の雪などは、灰色というよりもう黒色だ。 でも、前に雪が降ったのを、町のこどもたちは知らない。こどもの親たちも知らない。親の親辺りにな…