『とりかへばや物語』

とりかへばや物語(1) 春の巻 (講談社学術文庫)

とりかへばや物語(1) 春の巻 (講談社学術文庫)

 作者不詳なんですね。平安時代後期ですかそうですか。えっと、平安時代は、794年〜1185年/1192年。鳴くよウグイスから良い国作ろうの辺りまで。長いですねー。え、400年近いの? すごいな平安って。大雑把に、今から1000年くらい前ということで。
 元の文に、訳文が付き、語釈が付き、観賞が付き、その内のほとんど訳文のみを読んでいったので、文庫4冊だけども、実際読んだ分量としてはだいぶ短い。訳文でもよく分からなかったときに観賞読むと分かりやすかった。
 古典の訳文だからか、私の先入観か、観賞読むとあるいはこの作品だからこそかなとも思ったけども、なんとなく「あらすじ」を読んでいるような気分のほんのりとしたことが、最初の辺りにあった。全体に、起伏に富んだ読み進めやすい話です。
 有名な古典と言えど、ストーリーばれは、しょうがないかと思ったけど、できるなら避けたかった。(笑)
 作中の、気になった人物を三人挙げる。
 えっと、どんどん位が変わって行くので何と呼べばいいんだ。いや分かるか、浮気っぽい宰相中将ですよ。
 ていうか、男姿に戻った兄(簡単にこう呼びます)にしたって、東宮も、四の君も、吉野山の姉宮も、麗慶殿のひともと相手にしていたわけで。……と思ったが、そうか、宰相中将はそれ以上だったというだけの話ですね。浮気っぽいっていうか、惚れっぽいのか。多情?
 この宰相中将の心の動きようが、なんとも。妹(簡単にこう呼びます再び)は、この男の行動について冷静に考えて、息子を手放さなくてはいけなかったけれどきっぱりと別れた。兄は、うーん、兄の内面とか心の揺れ動く様とかあんまり書かれてないかな。とりあえず妹に対しては気持ちを注いでいるが。宰相中将は、四の君のところへ行けば四の君が気になり、妹のところに行けば妹が愛おしく、妹のところにいても四の君を心配したり、吉野山の妹宮と結婚すればそれはそれでちゃんと愛している。ころころ変わる。気持ちの向くまま行動してしまうし、行動してしまうと気持ちが向いてしまうという感じか。良いとも悪いとも言いませんけども、この人の存在にはほっとするところがあるかもしれない。身近な人間にとっては困った人?
 あれ。なんで兄は問題にならないのに、宰相中将は問題になるんだろうか。数が多すぎた? 単に、たとえば吉野山の姉宮の嫉妬心みたいなのが書かれていないだけでしょうか。それとも兄は完璧人間なのでそれでいいんでしょうか。ん、宰相中将が話の中でまず手を出した四の君に夫がいたというのが駄目なのか。はたまた兄妹が主役なので彼らにとっての障壁のみが問題となるのか。
 あと父ですね。兄妹の父。子どもに向かって敬語で話しているのは、古典のふつうみたいなので、まあそうなのかなと思うけれど。生まれてきた男の子が女の内面を持っている(そしてその逆もいらっしゃる)のをそのまま尊重して育てるんですよ。素晴らしくないですか。やっぱり敬語もいいなあ。ああもう敬語にしようかな。ツイッタとかでも(※おそらく難しいです)。
 それから吉野山の妹宮も気になった人である、ある意味で。話をまとめたのはこの人ではないか。つまり妹を求め彷徨う(?)宰相中将を留まらせた人である。この女性がちょっと口が軽かったり、宰相中将が魅力を感じるような存在でなかったら、話がまとまらないではないか(妹のことを宰相中将にばらしてしまえば話がこじれるし、妹宮のところで落ち着くのでなく妹を探し彷徨われても困ろうし、妹と宰相中将の息子のこともあるし)。というわけで、なんだか駒にも見えたのだった。話をまとめるための駒。兄にとっての駒、物語にとっての駒。でもまあ、それだけ魅力や能力のある人だからこそ(あるいは、そういう人=吉野山の宮、の娘だからこそ)兄はそばに呼び寄せたのであり、妹は親交を持っていたのさと言われてしまえば、そうか。
 さて、三人の話終わり。入れ替わりの話。登場人物は、手紙の筆跡が同じであることから入れ替わりがばれないかと心配するが、私なんかは声はいいのかとそっちが気になっていた。入れ替わる前の、妹が男として仕事に出た時に女みたいな声だなと思われなかったかということだ。実際どうなんだろう。声音は頑張ればある程度変えられるのかなぁ。筆跡の方が変えるの難しいのかな。変えて、その変えたものでキープさせなきゃならんのだよな。
 なんかいいなあこの時代とそんな気分になったが、いや時代が問題じゃないんだ、問題は人間であり、そうそうあの人たちは才能あり見目麗しく地位もあるんだよ。
 作中にちょくちょく出てくるなと思ったのは、隔てるってこと。相手に本当のことを話すか、ちょっと隔てて言わないか。あ、これはちょっとメモ程度のことにしとく。
 いつになくいっぱい書いた。有名な古典なので勘違いとかしていたらまあ恥ずかしいですね(笑)。良かったらご指摘くださいね。