「シンクロ」

 雨は好きじゃない。空が暗くなる。あいつは雨が好きなんだと言ってた。
 雨音は嫌いじゃない。どうせならザアザア降るやつがいい。あいつは雨音の中にメロディが聞こえると言ってた。雨の降るときどきによってそれぞれ別のメロディなんだそうだ。何を指してそう言っていたのかは分からない。不規則な数多の雨音からメロディを拾うのだろうくらいに考えた。
 降り出しそうな空を見て、思い出したのだ。さっきまで、もわっとした空気だったのが、今はかすかに冷たい風が吹いている。
「ポツン」
 降ってきた。大粒だ。なんとなしに眺めているうちに雨は大降りになり……。
「ザアァン! ザアァン! ザアァン!」
 ……は? 不規則なはずの雨粒たちがいっせいに、揃って、落ちてきている。
 揃っている、だからどうした。
 と自分で突っ込んだが、いや、いや。
 どうなってんだ、上の方。指揮者、夏風邪でも引いたか?