2011-05-01から1ヶ月間の記事一覧

小雨

晴れた日に、雨みたいな匂いがする。と思ったら、そこの花壇に水がやってあった。土の匂いだ。

「甘くったって」

「塩なんですよ」「いや、あんた砂糖だろうよ、そのざらざら具合。俺にそっくり」「でも"solt"って名前が」「綴り間違ってんな」「そうなんですよ」「いやいや、閑話休題、入れ物間違えたんだよ。うっかり野郎がさ」「砂糖の入れ物に入ってる砂糖のあなたに…

「君と法螺との間には」

さらさらとした砂は、グラニュー糖のようであり、グラニュー糖のようでなかった。 それならブラウンシュガーに似ているのかといえば、全然似ていない。波がこんなに洗っているのに、溶けもしない。海に溶けているのは塩であるし、砂糖が溶けているのが海であ…

「うさぎの寝言」

三年前にうちにやってきたうさぎが、なんだか最近うなされている。──ううう……。 うさぎもゆめをみるのだろうか。うすちゃの毛をふるわせて、なんだかかわいそうだ。今、かいぬしである娘は修学旅行にいっている。わたしはコーヒーを飲みながら、ねむるうさぎ…

「和音分解」

カシオペアが見えた日の驚きと言ったら。ひしゃくも見つけた。次々と見えた。 今度は星座を一つずつばらしていく。誰かが付けた名前を剥がしていく。私は名前をつけず、あの中のどれかがあなた。夜の間、私はあなたの子どもにかえる。歌を抱き、泣きながら眠…

「あとひとつ」

雨上がり一人つぶやく。あなたの左手掴んだままに。 明るい光の粒々が、紫陽花にひっついている。 青色の日傘は杖にするには短かった。「会うのよそうか」「ひどい男」「つまらないよそれ」「あーあ」「暇だよな、俺たち」「つまらない男ー」 秋の日はつるべ…