「甘くったって」

「塩なんですよ」
「いや、あんた砂糖だろうよ、そのざらざら具合。俺にそっくり」
「でも"solt"って名前が」
「綴り間違ってんな」
「そうなんですよ」
「いやいや、閑話休題、入れ物間違えたんだよ。うっかり野郎がさ」
「砂糖の入れ物に入ってる砂糖のあなたに、ていうか味蕾の、神経系のないあなたに私の甘さからさが分かるっていうんですか」
「何言ってんだ。入れ物に隔てられてんだから分かるわけないだろ」
「じゃあ放っておいてくださいよ。私は塩なんです」
「味は分からなくてざらざら具合は見て分かるっつうんだよ」
「だから視神経はどこに……?」
「まあ、それは言うな。俺の職業上の秘密だ。あのさ、あんただって自分で自分は味わえない訳だろ。入れ物の中には自分だけ、どれだけ甘いのかからいのか比べようがない」
「だからこそ名前が重要なんじゃないですか」
「ああいいよ、じゃああんた塩でいいよ」
「ええ」
「なあ、でも──」

「おかあさんー! 砂糖が兄弟げんかうるさいよー!」
「さっさとイチゴと一緒にして火にかけちゃいなさい」
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三里さんところの「創作家さんに10のお題2」より「8:甘くったって」
迷走しているのでしょうか。元々でしょうか。