鈴をつける

 <鈴の子>が迷い込んで来た。
 愛らしい音で午睡から目を覚ますと、畳の上を転がっていたのだ。私は面白半分に、<鈴の子>に、鈴をつけてみた。引き出しから、わざと同じくらいの大きさの鈴を選んだ。まるで双子のようになった。音は少し違う。<鈴の子>が動いて鳴り、当然つけた鈴も鳴り、二つの音色はむしろ騒がしく、そのささやかな騒々しさを私は楽しんだ。
 <鈴の子>はよくふらふらと遊びに行った。結わえているから戻ってくるのであるが。鈴に、朝も夜もあるわけはなく、夜中、私が寝入った頃にりんりんと音を立てて戻ってくることもあった。
 <鈴の子>は大きくなった。それに従って私はつける鈴を大きくしていったが、ある時、思い立ち、ごく小さな鈴を選んだ。その時から、<鈴の子>は成長を止めたようだった。たまたまかもしれないが、不思議なことだと思った。
 五センチ程の大きさにまでなっていた鈴を、放してやることにしたのは、なぜだったのか。夕方頃、解いてやると、ころころ辺りを転がっていたが、翌朝、いなくなっていた。
 それから一年ほど経った今、またも昼寝の最中に、右のポケットに<鈴の子>が入り込んでいるのを見つけた。
「おやおや」
 言いながら、滅多にないことが二度も続いたことに、頬が緩んでしまう。だが、その小さな<鈴の子>がころんと鳴った時、音色の懐かしさに私は目を見張ることになった。
「お前の親は元気かね」
 <鈴の子>は、知らん顔で、もう一度ころんと鳴る。