またふたまた
「呆れた」
と、里芋を剥いている母が言った。「またなの」
またなのだ。またというか、またのまたのまたのまたなのだ。
「いいじゃないの、めでたいことですよ」
レース編みをしている祖母が言ってくれたので、わたしも、
「そうだよねえ。四十年も長生きできたってことだもの。それともママはトラコが死んじゃえばよかったと思うわけ?」
尻尾が少し分かれてきたトラコを抱えて言う。
「そんなこと言ってないじゃない。ただ、こんなにうちから次から次に猫又が出たんじゃ、ご近所さんに怪しまれるでしょ」
さあできたと独り言のように言って母は水道を使い始める。
「次飼うのは、あたしは三毛がいいねえ」
テレビに顔を向けたまま曽祖母が言った。
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第91回の競作のタイトル案「またふたまた」。