「外れた町」

 昔、分譲地の抽選があって、もちろん外れたのだった。だから町は、こんな辺鄙な所にあるのだ。昔、というのが正しいのかよく分からないほど他の町たちと離れてしまった。この町は──別の宇宙である。別の言い方をすれば、この町だけ宇宙の外にある。
 何かの罰なのだろうか、と思い悩むよりも、何だか特別である、という気持ちの方が大きかった。道ではなくてよかった。町である。だから人々がいる。町は特にさびしくはなかった。栄えている、と言った方が正しい。一つ外れているので、比べてもしょうがないのだが、それでも町は桁外れに儲けていた。町民はテンションが違った。これだけ外れた場所にいれば、さもありなんというものだろう。たがが外れたようなお祭り騒ぎが日常だ。それで、観光で利益を上げている。接骨院など特に人気である。宇宙の外にまでどうやって客が来るのか。ツアーがあるのだ(そのお話はこう始まる。「昔、行き先の抽選があって、もちろん外れたのだった」)。注意書きには洒落か本気か、この旅行に期待をしないでください、とあるらしい。
 夜半、町民と観光客とによって歌われる調子っぱずれの町歌があり、町は、それが妙なハーモニーになって自分の表面に響くのを感じながら今日も眠りに就く。



【反省点】
 私益じゃなくて利益だ! なんか微妙な誤字だなあ。形が似ていて、打ち間違いより書き間違いに近いような(笑)
【変更点】
 ラストだけ変に情緒的になったかなあ。選評で触れてくださったかたがいたラストをわざわざ変えてしまいました。
【………】
 超短編の世界の3と同じ投稿締切日で、そちらがもう全く「恋愛の話難しい! 一行分かんないよ!」というようなありさまだったので、時間的な余裕はあんまりなかったけども(締め切りぎりぎりになってわあわあするのはいつもだが)、こっちはある意味弛緩してというか、のびのびというか、自由を感じながら(?)書いた。
損益分岐点
 全然関係ない話だが(そして損益分岐点も関係ないよ)、あれが一年以上続いている。あれとはこれだ。
http://d.hatena.ne.jp/nisanngaroku/20091026/p1
これです。一年一か月くらいだ。つまりクリック募金でした。こちらです。
http://www.dff.jp/
一年続いたからしばらく続くかな。