「つめたい猫の町」
ある冬の日、つよい風とともに、比較的あたたかなこの町に、めずらしいほどたくさんの粉雪が、朝から降り、つもった。
日が落ちる頃には、30cmほどになったが、空が間違いに気がついたのか、雨になり、その雨も、ほんの少し雪の上をぬらして、降り止んだ。
ところが、どうも夜中に、降りつもっていた雪が、それぞれ小さなかたまりになって、猫になってしまったらしい。朝には雪が、すっかり消えていた。
それからというもの町では、風もないのに寒そうな風の音がすると思うと、白い猫の姿がちらりと見える。風の音は町のあちこちをうろうろとする、猫たちの鳴き声なのだった。