白と灰色のうさぎの町

「白と灰色のうさぎの町」
 そこはとても寒い町なので、道の端や家の前の横っちょに、いつも雪が残っている。道の脇の雪などは、灰色というよりもう黒色だ。
 でも、前に雪が降ったのを、町のこどもたちは知らない。こどもの親たちも知らない。親の親辺りになると、それでも、「こどもの頃に降ったねえ」などと思い出話をすることもある。
 そういうことがあったので、この町の雪は実はうさぎなのだという者も、こどもの親の親の親のずっと親の頃からいつも町に一人はいて、しかしそんなことを言い出すものは、そんなことを言いだす割りには、なぜか決まっておとなしい者だったので、雪は雪だと反論されると黙ってしまうのだった。
 この町には雪がいつも残っていて、時々形を変える。それから、なんでだか増えたり、さみしいけれど減ったりする。